フレイルの基礎知識
この記事では「フレイルってそもそもなに?」と疑問に感じている方に向けて10分でフレイルの基礎知識を分かりやすく解説したいと思います。
フレイルとは健康と要介護の間の期間である
私たちは誰しもが年と共に心身が衰え、最終的には死へと向かっていきます。しかし、年齢を重ねてもいつまでも元気に身の回りを自分自身でこなし友人と一緒に遊びに出かけたりしている人もいれば、要介護状態になってベッド上で寝たきり生活を余儀なくされている人もいます。
両者には、なぜこういった差が生まれるのでしょうか?
加齢と共に心身が衰えていく過程には、健康な状態と要介護状態の間となる期間が存在します。この中間時期のことを「フレイル」と言います。
ちなみにフレイルを英語で訳すと「Frailty=虚弱」となりますが、”虚弱”という意味では当てはまらないのでご注意ください。
このフレイル状態の時期をどのように過ごすかが極めて重要で、何も予防策を打たずに過ごしてれば、結果として要介護状態への階段を早い速度で降りていくことになってしまいます。
要介護状態に陥ってしまってから運動を始めたとしても、健康な状態に戻すことは難しく、期待するような改善は見込めません。しかし、フレイル状態の時期に予防策を行えば進行を遅らすことが出来たり、再び健康な状態に戻すことが出来ます。
「最近疲れやすくなってきた」
「運動不足でつまづきやすくなった」
など、”なんとなく衰えてきたかも”といった状態が実は「フレイルのサインかも」と自覚し、早期に予防策を行うことがフレイル予防の第一歩となります。
フレイルの特徴は「中間時期・多面的・可逆性」
フレイルには大きく3つの特徴があると言われています。
それは見出しにも述べているように、
- 中間時期
- 多面的
- 可逆性
上記3点の特徴が挙げられます。
フレイルは、健康な状態と要介護状態の中間時期であり、「身体的・精神的・社会的」様々な要素から”衰え”が起こります。ただし、まだまだ衰えていると言っても早期なので予防策次第では健康な状態に再び戻ることが出来る可能性があります。
このような状態に当てはまる人って身の回りにも沢山いるのではないでしょうか。
フレイルは予備軍も含めると約半数が該当する
名古屋学芸大学大学院の下方浩史教授らによると、国内の65歳以上の高齢者のうちフレイルは309万人、その前段階であるプレフレイルは1,795万人と推計されています。よって、プレフレイルも含めると2000万人以上が該当することになります。
Long-term longitudinal epidemiological study of frailty and sarcopenia.下方浩史,安藤富士子.体力科学 2017; 66: 133-142
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/66/2/66_133/_pdf/-char/ja
また、東京都健康長寿医療センターの村山洋史らによる全国的な調査によると、65歳以上におけるフレイル・プレフレイルの割合は、フレイルが8.7%、プレフレイルが40.8%と高齢者の実に約半数がフレイルないしフレイル予備軍であると言えます。
National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey.村山 洋史.Archives of Gerontology and Geriatrics.2020.11-12
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0167494320302144?via%3Dihub
フレイルの基準は5つの項目からなる
フレイルには診断基準がいくつかありますが、世界的に最も広く用いられている基準は米国のリンダ・フリードが提唱した”CHS(Cardiovascular Health Study Index)基準”です。
このCHS基準を日本国内で妥当と言われる基準値に修正した『日本版CHS基準(J-CHS基準)』が一般的です。
- 6ヶ月間で2-3kg以上の体重減少
- 握力が男性<28kg、女性<18kg
- ここ2週間わけもなく疲れたような感じがする
- 通常歩行が1.0m/秒未満
- ①軽い運動や体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
J-CHS基準では、上記項目のうち3つ以上に当てはまるとフレイル、1つあるいは2つに当てはまるとフレイル予備群であるプレフレイルと判断します。
フレイルの評価方法には、他にも様々な方法が提案されていますのでその他の方法についてはまた改めて解説させていただきます。
フレイル予防のための3つの柱「運動・栄養・つながり」
フレイルを予防・改善するためには、以下に挙げる3つの柱がカギとなります。
- 運動
- 栄養
- つながり
これらは、どれか特定の運動や食事を実践したからといってフレイルを予防することは出来ません。重要なのはいかに3つの柱を包括的に日常生活に取り入れ、継続して実践していくことです。
運動するだけではフレイルを予防・改善することは出来ないので、栄養面の見直しや社会とのつながり作りも併せて取り組んでいきましょう。
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